投稿:YZ
4月の終わりから5月、6月の初めにかけて、笹状の葉の茎先に鮮やかな紫の美しい花をつける『シラン』。この時期に咲く花の多くが、白~黄色の花が多い中、高貴で鮮やかな紫色の花は特に目を引きます。今は9月、果実(蒴果と云う)の時期。超細かな種子を風に乗せ弾き飛ばそうと準備している時期です。
良くご存知のランで、『「シラン」なんて知らん。』ということは無いと思います。紫の蘭だから⇒紫蘭⇒シランという和名が付けられています。
『写真シラン』
白い花のシランも団地で良く見られます。白いシランは、色の遺伝子欠如の種子交配によって誕生したものです。遺伝子欠如と云ってもゲノムとしての劣性は問題ありません。また、殆どの繁殖は、種子交配よりも圧倒的に根部の偽鱗茎(茎の節間に生じる栄養貯蔵器官)から塊茎を産生して増殖(要するにクローン)することから安定して維持されています。従って、シランや白花のシランは、其々固まって群生して花を咲かせています。
団地には、ランの仲間では、芝生の中にピンクの『ネジバナ』を良く見ることが出来ます。この花は、名前の通り、螺旋状に捻じれた花序に花をつけ、その捻じれ方は、右巻きと左巻きがあります。どちらの巻き方が多いか調べるのも、自然の摂理を知る良い機会だと思います。このネジバナにも時々、白花が見られます。
ところで、シランは日本原産(厳密には日本から台湾、西南中国に原産分布。日本の野生シランは宮崎県の日向地方に分布しているとされるが、園芸品の逆野生化との疑念もあり、DNA同定されていないので定かでない。)のランです。控えめで清楚なタイプが多い日本産野生ランの中で、高貴ではありますが実に派手な日本離れしたランです。日本原産ということもあり、育てやすく、放置しても毎年花を咲かせることができます。これは、園芸品種としてのシランの世界の話です。実は、野生のシランは人間により採り尽くされ、現在、日本の準絶滅危惧種になっています。乱獲により、世界に誇れる日本の野生『シラン』の現状は・・・実に情けない。この事実を『知らん』と云う方も相当おられると思います。身近だった日本の野生ランのキンラン、ギンラン、エビネ、クマガイソウ等の野生ランもシラン同様に、心許無い一部のマニアックなコレクターにより、瀕死の状態にあり、絶滅した野生種もかなりあります。(ランは菌類や昆虫と高度に共生進化したことから、殆どのランは菌類に栄養補給を委ねて胚乳(植物の発芽~初期生育の種子にセットされた栄養源)を持たないものが多い。その為に発芽・生育の全てのステージで多様な菌類の共生に依存しています。採集により菌類との共生が断たれると発芽も生育出来なく、また、特異な昆虫との共生関係が断たれると種子も着けることのできない植物なのです。唯、シランに限っては例外的に胚乳(子葉)を持ち、ある程度の栄養があれば、発芽・生育できる特性があります。育て易いランとも云えますが、しかし、生育には菌類との共生は必要で、乱獲にはやはり弱い植物なのです。)
現在、世界の野生ランは約17,000種 日本の野生ランは250~270種あると言われます。現在と地球の生態環境で最も新しく、最も多様化している進化植物だと言われます。昆虫との共生、菌類との共生など実に巧みで見事な生き方をしています。やはり、最大の天敵は人間で、ランは世界のプラントハンターの最高のターゲットであることから、絶滅したもの、絶滅の危機に晒されているものが相当あります。
蛇足ながら、ランは英語でオーキッド(orchid)。語源はギリシャ語のオルキスで睾丸を意味するそうです。地生ランの地下器官(バルブ)がそれに似ていることに由来している。昔の欧州人はランの地下茎は精力剤になると薬用扱いしたそうです。
『シラン』の花言葉は「あなたを忘れない」。5月6日の誕生日花でもあります。ご存知ですか? ウム・・・しらん。
以上
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