さくらの花はしきりに散り始めた
まだ若い落ちたてのはなびらは新鮮で
色あせてはいない
木の根元に堆積した花びらたちが
固まって春風を避けている
一掴みのはなびら
柔らかく、なぜかかすかにあたたかく
てのひらのなかにいきづいている
ちいさな橋の上からはなびらを放つ
風に舞いながら水面に落ちてゆく
花筏のなかまとなって流れてゆく
住みついた鯉が群れている
さくらの花びらをたくさん食べなさい
どんどん食べなさい
そうすれば君たちはその地味な鱗を脱いで
緋鯉に変身することができるかもしれない
さくらのはなびらが途切れずに降り注ぐ
からだいっぱいに受けていれば
私も変身することができるかもしれない
平成25年4月4日 町田 辰夫
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