コラム:琵琶湖をめぐる旅の記録 2/2

若林添乗員の紹介で、バスの運転手が有名なCLAB HARLE たねやの近江八幡のお店に案内することになった。名の知れたバウムクーヘンの製造販売のお店であった。店の中も明るく立派であったが、その奥の広大な庭を見た時、これはただものではないメーカーだと感じ入った。兎も角、豪華で規模が大きく、おおらかさを感じさせた。バウムクーヘンのほかにリーフパイ、その他にも和菓子迄並んでいた。これは単なるお菓子屋ではないと、ため息をつきながら店を後にした。

バスで、目的のレストランに着く。店主が慇懃に一行を出迎えた。近江牛を食べるのは初めてである。料理はすき焼きであった。味はうすめで、たれはあまり甘みが強くなかったので助かった。肉は柔らかく、牛肉独特の臭いが無く、すんなりと喉を下って行った。これならばもう少し量が食べられるのだが、と言う肉の量であった。やはりビールを注文した。

近江地区で良く食べられているという赤こんにゃくも出た。これは店主が説明を加えた。しかし、私にはあまりおいしいものとは思えなかった。

2泊目の夜はまた同じ部屋である。なじんできたようで、気分が落ち着く。安藤さんが鮒ずしを持って7時半に来ることになっている。風呂を済まして少しテレビを見ているとノックが聞こえ、鮒ずしを携えた彼が姿を現した。話し方がソフトで、気兼ねのない性格の様で、話しやすかった。奥さんを亡くし、今は一人ぐらしをしているという。自分で料理も作るそうで、それなりに生活を楽しんでいる様子が伺えた。

お酒と鮒ずしを楽しみながら、他愛のない話を沢山交換した。楽しい夜であった。

その後も時々会話を交わしたが、お互いにそれ以上は深入りせず、淡交である。

帰りの新幹線でも、軽く挨拶をして別れた。旅の友はそれで終わり。淡くたのしい友であった。一期一会。

3日目は、竹生島クルージングである。バスはオーミマリン彦根港に着いた。小雨が降っている中に出航した。湖の色は薄い灰色で、波立つ先端だけが白く泡立った。

竹生島は周囲二キロの小さな島で、島全体が山の様であった。頂上の宝厳寺(弁財天堂)までは165段を昇らなければならない。階段の途中で振り返ると、琵琶湖が見える、と言うけれど、とてもそんな余裕はない。階段迄の途中も坂である。小雨は降り続いていた。

同じく国宝の唐門は絢爛豪華な桃山様式を残す貴重な遺構と言われている。派手好きな秀吉が建てた幻の大阪城の極楽橋と説明されてた。

一通りのルートを見終えて、再び船に戻る。帰りの船室では琵琶湖周航の歌が流れていた。

今回の旅の目的は、竹生島と鮒ずしであった。

この旅行の話を聞いた友達が、一冊の本を送ってくれた。井上靖の「星と祭」である。文庫本で600ページあり本の厚さは2センチを少し超えていた。本を読むのは好きで、長編を読破するのにも慣れていたが、一つの旅のために読むのには少々ボリュームに富んでいるのではないか、と思った。しかし、兎も角読んでみることにした。

びわ湖や竹生島のことは小説の中によく出てきた。また、湖周辺の寺院を多数訪ねる物語があり、11面観音像がサブテーマになっていた。この小説でさまざまな観音像のイメージが植え付けられた。しかし、旅と観音像は殆ど関係なかった。しかし、竹生島近くの湖面を眺めていると、物語の中の情景と重なり、感慨に豊かさが与えられた。

竹生島と鮒ずしの関連は私の全くの誤解であったようである。島の住人が鮒ずしを作っていたのではないか、これはありえないようであった。なぜなら無人島であるからだ。それならば周囲6.8Kある沖島はどうなのだろうか。この島には250人ほどの住民がいると言う。そこならば漁をして、鮒ずしを作っている可能性がある、と考えた。ネットで調べた範囲では、その痕跡は無かった。島の料理店でもメニューには見当たらなかった。どうやら近江地区の漁師や業者が地元の特産料理として作っていたり、家庭でも作っていたらしいのである。どうも勝手な思い違いであったようである。街でそれらしい居酒屋でも探し当ててみれば、おいしい地酒と共に地元特有の鮒ずしにありつけるのかもしれない。

以前、ネットで買ったことを思老いだした。わざわざ苦労して現地で手に入れなくとも、キーボードから、好きなサイズを好きなだけ注文できる。そして、冷凍便で自宅まで届けてくれる。

そういう時代になっているのだ。折を見て注文をしようと思う。

あの安藤さんと共に食した鮒ずしは、偶然とはいえ稀有な体験だったのだ。

旅の印象

 琵琶湖への旅は今回で2度目である。今から12年ぐらい前になると思うが、これは個人の旅行では無かった。その当時、私は埼玉県中小企業団体中央会と言う埼玉県庁の下部組織の常任理事を承っていた。その団体が視察団を募って滋賀県の中央会と交流した。当時滋賀県は知事が嘉田由紀子さんで、大津の市長が越直美さんであった。この二人がゲストとして講演をした。今までの会合と違って、ソフトな会合が開かれた。また、滋賀県の繊維産業のファッションショウが華やかに展開された。これにも優雅で華やいだ気分を与えられたのをよく覚えている。会場の通路では様々な商品が展示即売されていて、勿論、鮒ずしもあり地酒もあった。その内、鮒ずしを買って帰ったと記憶している。

こうした前の旅の印象が底にあり、滋賀県や琵琶湖に淡い思慕があった。

小説、星と祭にも多くの寺院が出てきたが、今回の旅も複数のお寺の見学である。私は信心の乏しい高齢者だが、旅を終えてみて、なぜこれほど寺院が多いのか、また人は熱心に創るのはなぜなのか、深く考えさせられた。

びわ湖は大きく、海の様でもある。そして何か力を感じる。琵琶湖自体が観光になっているわけだが、その周辺にもさまざまな魅力ある場所や施設があって、琵琶湖を中心としてスケールの大きい観光地帯を形成している。琵琶湖を中心とした大きなパワースポットではないかと思う。また、京都の文化を強く受けているのか、全体に品格を感じさせると思うのは私だけだろうか。また訪れたい。

令和6年5月15日                    町田 辰夫

追記・

帰りの新幹線の中で、前もって注文した弁当を食べた。「蒲郡オレンジパーク積み込み弁当」と称するチラシが添乗員によって配られた。それによって、希望者の注文を受け付けた。大宮着が21時近いので、車中で夕食を済ませた方が良いと思い、私も希望した。釜揚 しらす弁当と言う名称で、中にはその他にかき揚げ、出汁巻き卵、鮭フライ、鶏の照り焼き、きのこのマリネ、ほうれん草のおひたし、みかんゼリー等。

これが結構おいしかったので敢えて追記した。¥1,300(税込)である。






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