ツアーのタイトルは「近江牛を食し彦根城・比叡山延暦寺・竹生島クルージング魅惑の滋賀県3日間」である。トラッピクス、阪急交通社の企画で、単身でも参加できるので申し込んだ。前から琵琶湖へ行きたい、竹生島へ行ってみたい、と考えていた。
旅は思い出を作る。特に高齢者にとって、日常は単調な繰り返しで、古い思い出を回顧するより方法がない。
旅に出ると、新鮮な新しい思い出が加わる。パッケージツアーはそういう意味においても高齢者むきである。同行者との交流もできる。これも新しいチャンスである。
いくら元気だと言っても、88歳と7か月のわが身を考慮し、旅行傷害保険に申し込もうと考え、ネットで調べたところ、阪急がタイアップしているチューリッヒ保険にアクセスした。
ところが途中で入力が止まってしまった。良く見ると80歳以上は対象外であった。初めてこの手の保険を申し込む気になったが、駄目であった。
随分前に医療保険には入っていたので、それと健康保険証を持参すれば、万一の場合に何とかなるだろうと考えた。
さて、出発の日、4月21日(日)の朝がやってきた。6時少し前に起床。朝食は忙しいので、乗り物に乗ってから食べることにして、出発の準備をする。
大宮までの新都市交通、ニューシャトル今羽町駅6時58分に乗った。大宮7時20分の電車に乗る。これは小田原などへ行く東京駅停車で、上野で乗り換えないで済むので助かった。
8時20分集合には悠々間に合う。
東京駅日本橋口(1F)が集合場所である。東京駅に着き、すぐ制帽をかぶっている男性に場所を聞いたが、彼はガードマンらしく、あちらの駅員に聞いてくれ、とややぶっきらぼうな返事をもらった。どうやら、旅行者が多く、高齢者がいろいろ訪ねるのに嫌気がさしているのではないかと思われる態度であった。その後の駅員の対応も似たようなものであった。
日本橋口に着くと、あたりは旅行者であふれていた。確かに旅行に参加しない人にとってはわずらわしく、邪魔な集団だろうと思う。
阪急の旗を持った若い男が見え、それが今回の担当者の若林君であった。若いと感じたのは周りに年寄りが多すぎたせいかもしれない。
すぐ近くのキオスクで、早速朝食用のサンドイッチを買う。後は新幹線の乗り場へ誘導されるのを待つ。プラットホームの売店で缶ビールを買う。時間があったので、待合室で食べながら飲む。
こだま8時57分、各駅停車で時間が掛かった。岐阜羽島到着までは約3時間である。昼に近いのでやはり駅のキオスクでおにぎりを2個買った。昼食をどこで食べるかと言うアドバイスは皆無であった。
待っているバスで彦根城に向かった。
バスは約70キロ近い道のりを走った。こだまと言い、このバスと言い乗っている時間の多いこと。これはどうやら旅行社の作戦で、コストの問題と、団体を安全にまとめて管理する手段が両方あるようである。バラバラになると、これを指定時間に集めるのはなかなか労力を要するのだ。
彦根城は降り始めた雨の中に見えた。男性のガイドがついた。70歳前後の気さくな人柄で説明は分かりやすかった。イヤホンを通して良く聞こえた。少し離れても問題なかったので、これは良い方法だと感じた。
結果的にはお城の天守閣迄、途中説明を聞きながら、階段を上がった。考えてみると、城は概ね高いところに立てられている。石垣のつくり方の説明などを聞きながら、坂道と階段の上に築かれた城に着くまで結構な努力を要した。天守閣の頂上までは細い急角度(60度)位の階段を昇り詰めなければならない。やっと到着して下界を眺めたが、雨に煙っていて遠方までは見通せなかった。当然ながら降りるための下り階段がある。手すりがあるのでそれを頼りに踏み外さないようにそろそろと足を出す。
キャラクターのひこにゃんは、最近は人気が出て来たのか、決まった時間によって出現するシステムになっていた。20年以上前にこの城を訪ねた時は、ひこにゃんが踊っていた。衣装の白い部分が薄汚れていたので、少々哀れな気がしたのを覚えている。
城は天守閣まで無理をして上がるより、少し離れた場所から眺めるほうがよさそうである。
その後はまたバスに乗り、彦根市の和食店で夕食を執る。天ぷら、刺身、握り寿司、などの料理が出た。ビールを頼む人やお酒を頼んだ人がいたが、大人数を捌くので女性の担当者が右往左往していて、なかなか注文のお酒が届かなかった。私はその店の名称で「お酒2合」を頼んだ。やっと来たとき汁は冷めていた。
彦根市は琵琶湖の北部の三分の一ほどの上部に位置している。食事が済むと草津市のホテルに向かう。草津市の位置は琵琶湖の南側のしっぽのあたりで、新しい街のようであった。バスが着いたのは、7時30分程であった。ホテルはアーバンホテル南草津。
部屋はビジネスホテルの一人部屋で、必要なものはすべてそろっていた。浴槽は日本人向けか、十分に深かった。首まで漬かれる。
こうしたホテルは良くできていて、私は一人で停まるのが好きである。
7階のホテルの窓からは、眼下に南草津の街が見える。新しい街である。
旅は二日目に入る。
石積みのある門前町坂本と世界遺産である比叡山延暦寺の表参道として1927(昭和2年)に施設された坂本ケーブル。ケーブルカーにはめずらしい途中駅二か所や橋架7か所、トンネル2か所と変化に富む車窓からは登るにつれて素晴らしい琵琶湖の景観が大きく広がる。と記述されている坂本ケーブル駅までバスで行く。
確かにこのケーブルはなかなかユニークなもので、電車の様でもありケーブルの様でもある乗り物であった。雨は降っていなかったが、生憎、曇っていたので車窓から覗く琵琶湖は灰色に装っていた。
駅終点から、延暦寺根本中道へ向かう。途中125段の階段が目の前に立ちふさがる。手すりがあるので、どうやら登りきることができた。
今度の旅は、坂道と階段の連続で、足元をよく見ないと危ないので、景色を眺めたり、案内人の説明をじっくり聞く余裕は無かった。
昼食は道の駅びわこ大橋米プラザのレストランで天ぷらそばとビールを飲む。知り合いになった安藤さんという男性と一緒のテーブルで食べた。その時、鮒ずしの話が出た。私がお店で買おうとすると、クーラーはお持ちですか、と聞かれた。持っていないと答えるとそれでは一寸、と言われ買うのをあきらめた。しかし、安藤さんは昨日買って、ホテルの冷蔵庫に入れてあるという。それはいいですね、と私。結局、私の部屋で一緒に鮒ずしを食べることになった。では、それに合うお酒は私が買います、と言う事になり、この後行く予定のびわ湖バレイの売店で、不老泉比良の誉、と言う地酒を買った。純米吟醸酒である。
びわ湖バレイでは日本一早いと言うロープウェイで山頂まで行く。それからさらに登ると花畑がある。頂上からは琵琶湖が見渡せる。
このびわ湖バレイは、かなり品格の高いレストランやバーがあり、更に複数のカフェなどがあって、落ち着いた高級感のある観光施設と言う印象を持った。
そのカフェで、前日の夕食の時に私と安藤さんの前に座った女性とジェラードなどを食べた。外に出た時、琵琶湖を背景に写真を撮ってもらいたいと、彼女がスマホを渡した。画面の中には、大きく手を挙げたポーズの姿が映っていた。私も持参したカメラで撮ってもらった。なぜか、私も両手をあげてポーズした。これ、お手上げ?写真はお互いの機器の中に自分の姿を納め、行きずりの相手の写真はお互いに持たない。これもまた良し、かな。
天気が良ければ琵琶湖を一望できるインフィニティラウンジでウェルカムドリンクを飲むのも良いかと思う。¥3,000で入れる。
夕食の「近江牛」までの時間、彦根城の元城下町、長浜市の黒壁スクエアへ立ち寄った。伝統的な建造物が立ち並ぶ黒壁スクエアである。黒壁ガラス館では、手作りの小さな招き猫を娘のために買い求めた。
建物の外観が黒く、重厚で静謐。高級感にあふれた店が並ぶ。和菓子屋らしき店も風格があり、さぞかしおいしいお菓子があるだろうと、想像させる。また、とり料理屋では焼き鳥から鍋物迄のメニューが見え、こんな店でじっくりと料理とお酒を飲んでみたいと思った。
時間があるので、若者が4人ほど座っているコーヒーショップがあったので、ふらりと入った。ブレンドコーヒーをブラックで飲んだ。おいしいコーヒーだった。帰る時、「うまかった。」とやや大きな声で言って店を出た。
続く
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