コラム:世界の珍味

 お話の環境は、おいしいものを実際に食べながら、お酒も飲みながら、お互いにおしゃべりをしている状態。

 さて、世界には各地、各様のめずらしい美味がありますが、ご参加の皆さんの中でどんな珍味を御存知でしょうか。実際に食べたことがないものでも、結構です。

1.  フォアグラ

2.  トリフ

3.  キャビア

4.  熊の手のひら(ただし、利き手の方)

5.  岩つばめの巣

6.  ふかひれ

7.  鮒寿司

8.  鮎のうるか

9.  ほや

10. 猿の脳みそ

11. うに

12. からすみ

13. なまこ

14. あわびの肝

15. あん肝

16. くさや

17. ままかり

18. 豆腐よう

19. ドリア

20. すずめかの幼虫

 それぞれの方々が、いろいろご発言なさいました。

 これだけでも、よだれが出そうな美味の行列です。おいしいもののお話はみんながうれしくなります。

 さて、いよいよ、取って置きの珍味の話です。

 それは、「蚊の目玉」の料理です。

 あの、ミクロの蚊の目をどのようにして採取するか。ここにすばらしい知恵があります。

 みなさんは、こうもりが夕方になると薄闇の中を盛んに飛来するのを見たことがありますか。私がまだ子供のころ、結構たくさん飛んでいるのを見たことがあります。ちょっと不気味な姿でした。

この蝙蝠は、ただ面白がって飛んでいるのではありません。蚊を食べているのです。だから一定の方向に向かっているのではなく、行ったり来たりして、蚊を追っています。

 彼らの巣は、洞窟のような昼間は暗い場所にあります。食べられた蚊は、目だけを残し、蝙蝠の糞とともに落下します。

1. この、糞を集めます。大量の蚊の目玉が、累々と集まっています。

2. 絹の布で、3日3晩、岩清水で晒します。やがて真珠のような眼の集積がその姿を現します。

3. これを象牙の小さじで掬って集めます。

以上で、主材料の、蚊の目は用意できました。

 目だけでは、何の味もしません。せっかく手をかけて集めた材料もこのままでは無駄になります。

 この味を引き出すには、蚊の涙が必要です。例えにも良く、蚊の涙ほど、と表現されるように、目玉以上に涙の採取には、更なる知恵が必要です。

1. 先ず、藪の中に6角形をした4畳半ほどの小屋を建てます。まわりを始めは開け放してあります。

2. 夕方、天井から首を切った鶏をつるします。下には皿を置きます。その血の臭いを嗅ぎつけた蚊の群れがここに集まります。想像を絶した量の蚊が集まります。部屋の中は、蚊の薄黒い塊ができます。この中に人が入ったら、一瞬のうちに、全身の血を吸いつくされるでしょう。

3. 部屋が蚊の群れで満杯になったら、急いで、6面の障子を閉めます。

4. 次に、ぼうふらで一杯になった水槽を持ち込みます。全身、蚊を避けるための装束で固めた人が、このぼうふらの浮遊する中に、52度の中国酒を注ぎます。初めは気分よく泳いでいたぼうふらは、やがて酸欠状態に陥り、断末魔の踊りを見せ、やがて動かなくなり、水面に横たわります。

5. これを見ていた蚊達は、悲しみのあまり、一斉に、わーんと泣きます。皆さんも蚊がなく声を聞いたことがあるでしょう。それが億という数ですから、中に入っている人の鼓膜が破れるほどです。当然、耳栓はしています。親子の情は蚊の世界でも濃く、体の大きさと人情は反比例も正比例もしないようです。。

6. 当然ながら、泣く声だけでなく、涙がながれます。はじめは、かすかな湿り気が、やがて、霧となり、雲になり、ついに小さな滴りとなって、落ちてきます。

7. 下には、青磁の大皿が敷き詰めてあり、約10時間ほどの号泣の後、涙が猪口に2杯ほど採れます。

この貴重な蚊の涙で、蚊の目を和えます。

かすかな、塩味のなかで、舌の上で踊る蚊の目玉の味こそ、世界の珍味と言えます。噛めるとも、噛めないとも言えない微妙な食感も捨てがたいものであります。中でも食べた後、2~3日経ってから、歯の間から転げ落ちた目玉を、噛んだような、噛まないような感触で味あう喜びは、将に僥倖と言えます。

さて、この「蚊の目玉、蚊の涙和え」を食した、世界の名音楽家の感想をお聞きください。

1. ベートーベン 「うん、これは うんめい」

2. シューベルト 「ますます、だな、かなりますだな」と少しなまっています。

3. モーツアルト 「おいしいが、味が少しアマでゅうす」

4. ショパン   「僕にはショピン、でもなかな月光(けっこう)」

5. ビゼー    「ちょっと、かるめんだな」

6. プッチーニ  「バターフライにした方が、チョウうまいのではないですか」

7. バッハ    最後に音楽界の重鎮が締めました。「なかなかフーガな味だ」

 以上でこのお話は終わりです。どこまでが本当か、私を疑ってはいけません。中国の古いメニューに、蚊の目玉の料理が載っています。


平成20年11月19日(水)     町田 辰夫記す。


大宮 今羽町団地 OK会

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