コラム:花を盗む


一軒の家

十坪ほどの庭

低い生垣

その庭にひとつの花が咲いている    

芥子の花に似たかたち

うすいピンクの花びらが

かすかにゆれている

その家の人に見つからないように

なにげなく近づき、通り過ぎる

花をのぞきながら

昨日の朝も、夕方も、また今朝も

夢のなかでもゆれている

なぜ、こんなにもこころひかれるのか

蜜蜂になって花の中に翔んで行きたい

そして花粉にまみれ、花の香りに酔ってみたい

しかし、蜜蜂に転生するには

気の遠くなるような歳月が必要だ

いつかすきを見て

あの花を手折り、持ちかえって

自分の花瓶に挿し

こころゆくまで見つめようか

たぶん花はたちまち萎えてしまうだろう

それならば

思いきって根こそぎ掘り返し

自分の庭に植えてしまおうか

きっとそれまであった花木は消え去るだろう

盗んできた花は根付くのだろうか

おそれは花が枯死してしまうことだ

そうなったら

一緒に立ちつくしたまま

わたしの息も止まるだろう

              平成23年9月26日  町田 辰夫

大宮 今羽町団地 OK会

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